HipHopのDJの始め方|スクラッチとカットインの入門手順
HipHopのDJに憧れて調べ始めたのに、出てくる情報は「ビートマッチして長く重ねましょう」ばかり——それ、Houseのやり方です。HipHop DJの主役はカットイン(一瞬で曲を切り替える)とスクラッチで、練習すべきことも機材の選び方も4つ打ち系とはまるで違います。この記事では、HipHop DJの文化とBPM帯、Serato+DDJ-REV1という定番構成、曲の集め方、最初に練習するカットインの手順、そしてワードプレイの初歩まで解説します。
HipHop DJの文化——DJは「元祖」であり競技者
忘れられがちですが、HipHopという文化はDJから始まりました。1970年代のニューヨークで、DJがレコードのドラムブレイクだけを2枚使いで延々と繰り返した——それがHipHopの起点です。スクラッチもジャグリングも、ターンテーブルを楽器として扱うターンテーブリズムとして発展し、DMCのような世界大会まである。HipHopのDJには「競技」の血が流れています。
だからプレイの美学もHouseとは逆です。曲の境目を消すのではなく、切り替えを聴かせる。ワンフレーズで刻む、2枚使いで煽る、スクラッチで合いの手を入れる。手数と間で沸かせるジャンルです。
BPM帯は大きく2つに分かれます。
| 系統 | BPM目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| ブーンバップ / クラシック | 85〜95 | 90年代的なサンプリングビート。頭を振るテンポ |
| トラップ / 現行メインストリーム | 表記140前後(体感70前後) | ハイハットの刻みが細かい。現行パーティの主流 |
| R&B / スロウジャム | 60〜75 | 中盤や締めで使う歌もの |
表記140のトラップは体感70として扱えるので、ブーンバップとトラップは倍テン・半テンの関係で行き来できます。ここを理解しておくと選曲が一気に楽になります。
機材とソフト——Serato+DDJ-REV1が定番の理由
HipHop系の現場標準ソフトはSeratoです。ターンテーブル文化から発展したソフトで、スクラッチ時の追従性とキューポイントの叩きやすさに定評があります。米国のHipHop DJのブースはSerato率が圧倒的で、日本のクラブでも同様です。
コントローラーは、ターンテーブル2台+ミキサーの配置を模したバトルスタイル(横型)レイアウトのものを選びます。
| 機材 | 価格 | HipHop入門での位置づけ |
|---|---|---|
| Pioneer DDJ-REV1 | ¥34,000 | 入門の本命。横型レイアウト・Serato DJ Lite付属・スクラッチ向け設計 |
| Pioneer DDJ-REV5 | ¥90,000 | 上位機。16パッド+ジョグ画面+Serato DJ Pro対応。本気で競技寄りに行く人向け |
| Pioneer DDJ-FLX4 | ¥49,500 | Serato DJ Liteも動くが縦型レイアウト。HipHop専志望ならREV1が上 |
REV1(幅53cm)はFLX4より横に大きいのに安い。その分の予算がフェーダーとレイアウトに振られている、と考えると分かりやすいです。ピッチフェーダーがジョグの上にある配置もターンテーブル準拠。機材選びに迷ったら診断か機材比較でチェックしてください。
曲の集め方——「使える形」で持つのがHipHop流
HipHopの選曲はヒット曲への依存度が高いジャンルです。フロアは知っている曲で沸く。だから集め方にもコツがあります。
定番クラシックを年代別に揃える
90年代ブーンバップ、2000年代クラブヒット、現行トラップ——それぞれ20曲ずつ「絶対沸く曲」を持つのが最初の目標です。名盤ガイドやプレイリストを参考に、まず質より網羅で。
DJ用エディットの存在を知っておく
HipHopの現場では、イントロにドラムだけの小節を足した「Intro Edit」や、アカペラ・インストゥルメンタル版がよく使われます。カットインやワードプレイの素材になるからです。購入サイトでは同じ曲に複数バージョンがあることを覚えておいてください。価格帯は1曲数百円、月額制のサービスもあります。
権利面は購入が基本
サブスクの音源はDJソフトに読み込めないものが大半です。ダウンロード購入で集めるのが基本線。詳しくは「DJと著作権」で解説しています。
最初に練習する定番のつなぎ——カットイン
HipHopの基本は、次の曲の頭(1拍目)をキューポイントに置き、前の曲の区切りで一気に切り替えるカットインです。ロングミックスより先にこれを覚えます。
手順1: 曲Bの「1拍目」にキューポイントを打つ
ラップが始まる直前、ビートの頭にキューを打ちます。Seratoのパッドに保存しておき、いつでも一撃で頭出しできる状態にする。
手順2: 切り替えポイントは8小節の頭
曲Aのフレーズの切れ目(8小節・16小節の頭)を狙います。ラップは4小節・8小節単位で韻が区切れるので、切れ目で替えると気持ちいい。
手順3: パッドを叩くと同時にクロスフェーダーを切る
曲Aの切れ目の瞬間、曲Bのキューパッドを叩き、クロスフェーダーを一気に反対側へ。BPMが多少違っても問題ありません。一瞬で替わるから、テンポ差が事故にならない。これがカットインが初心者に優しい理由です。
並行して: ベビースクラッチ
ジョグに手を乗せて「シュッ、シュッ」と前後に動かすだけの最初のスクラッチです。曲Bを待機させた状態で、曲Aのビートに合わせて2拍目・4拍目に入れる練習から。フェーダーはまだ使わなくていい。これだけでプレイの「HipHopらしさ」が段違いになります。
ワードプレイの初歩——歌詞で曲をつなぐ
ワードプレイは、歌詞の単語や名前をきっかけに次の曲へ飛ぶHipHop DJ特有の選曲術です。たとえば曲Aのリリックにアーティスト名が出た瞬間、そのアーティストの曲にカットインする。フロアに「今の聴いてた?」という笑いと歓声が起きます。
初歩の手順は3つ。
- 手持ちの曲の歌詞から「固有名詞・共通ワード」をメモする
- 同じワードを持つ曲同士をSeratoのクレートでペアにしておく
- カットインの練習台としてそのペアを使う
高度に見えますが、実体は「事前に仕込んだカットイン」です。カットインが安定すれば、そのままワードプレイに化けます。つなぎの種類を体系的に知りたい人は「DJのつなぎ方の種類」もどうぞ。
よくある質問
Q. HipHopのDJに向いている機材はどれですか?
Pioneer DDJ-REV1(¥34,000)が入門の定番です。ターンテーブルを模した横型レイアウトで、クロスフェーダーの操作感がスクラッチ向きに作られています。ソフトはHipHop系の標準であるSerato DJ Liteが付属します。
Q. スクラッチができないとHipHop DJは名乗れませんか?
名乗れます。現場のHipHop DJの仕事の大半は選曲とカットインで、スクラッチは装飾です。ただしベビースクラッチ程度は数週間で形になるので、並行して練習する価値はあります。
Q. HipHopのBPMはどれくらいですか?
ブーンバップ系は85〜95、トラップ系は表記140前後(体感は半分の70前後)が中心です。倍テン・半テンの関係を使えばこの2つの帯は行き来できるので、両方持っておくとセットの幅が広がります。
まとめ
- HipHop DJの主役はカットインとスクラッチ。切り替えを「聴かせる」文化
- BPMはブーンバップ85〜95、トラップ表記140前後。倍テン・半テンで行き来できる
- 機材はSerato+DDJ-REV1(¥34,000)の横型レイアウトが定番
- 最初の練習はキューポイント+クロスフェーダーのカットイン。次にベビースクラッチ
- ワードプレイは「歌詞で仕込んだカットイン」。ペアをクレートに貯めるところから