DJコントローラーに4chは必要?
「どうせ買うなら4chのほうが後悔しない?」——機材選びで一度は考える疑問です。先に答えを言うと、大多数のDJは2chで足ります。4chが活きるのは特定のプレイスタイルの人だけ。この記事では、4chが本当に必要な場面、DDJ-FLX4とFLX10の差額約10万円の正体、「いつか使うかも」で買ってはいけない理由を解説します。
そもそも2chと4chは何が違うのか
chはチャンネル、つまり同時にミキサーへ流し込める音源の数です。2chなら2曲、4chなら4曲を同時に扱えます。
DJの基本動作を思い出してください。今かかっている曲に次の曲を重ねて、入れ替える。この繰り返しです。つまり基本形は常に「2曲」。ビートマッチングも、EQでの帯域整理も、つなぎの組み立ても、登場人物は2曲だけです。DJプレイの根幹について詳しくはつなぎの種類まとめも参考にしてください。
4chはこの基本形に「3曲目・4曲目を足せる余白」を用意したもの。逆に言うと、余白を使う予定がないなら、4chは持ち腐れになります。
2chで足りる人が大多数、という現実
身も蓋もない話をすると、現場に立っているDJでも実質2デッキ運用の人が多数派です。クラブに4台プレイヤーが並んでいても、常時使うのは2台。3台目はアカペラやループを重ねる「ここぞ」の演出用です。
初心者ならなおさらで、2chでやるべきことが山ほどあります。
- ビートマッチングを耳で合わせられるようになる
- EQで2曲の帯域を整理しながら混ぜる
- 8小節・16小節単位で展開を読んでつなぐ
- 選曲とセットの流れを組み立てる
この4つが2chで完成しないうちに3曲目を足しても、音が濁るだけです。むしろ2曲を丁寧に混ぜられる人のほうが、4デッキを雑に重ねる人より確実に上手く聞こえます。DJの評価は同時に鳴らした曲数では決まりません。フロアが聴いているのは「今鳴っている音が気持ちいいか」だけ。そこに寄与するのは選曲とEQの丁寧さであって、デッキの数ではないのです。
4chが活きる3つの場面
とはいえ4chが無意味なわけではありません。活きる場面ははっきりしています。
| 場面 | 何をするか | 向いている人 |
|---|---|---|
| 4デッキミックス | アカペラや3曲目を重ねてマッシュアップ的に展開する | ハウス・テクノで長尺の展開を作りたい人 |
| サンプラー・効果音の常駐 | 3ch目にジングルや効果音を割り当てて即座に差し込む | イベントMC対応・パーティー系DJ |
| 外部入力の受け | ターンテーブルやシンセを空きchに接続する | DVSやハードウェアライブを組み合わせたい人 |
共通するのは、どれも**「2曲のミックス」が完成した人の応用技**だということ。4デッキミックスは2デッキの精度がそのまま2倍要求されますし、外部入力の活用は機材構成を自分で設計できる知識が前提です。
自分がこの3つのどれかを「今すでにやりたい」なら4chを買う理由になります。「なんとなく良さそう」なら、まだその時ではありません。
もうひとつ現実的な視点を足すと、4ch機はサイズと重さも別物です。4ch機はフルサイズ筐体が基本で、幅70cm超・6kg級がざら。ワンルームの机に常設できるか、収納できるかは買う前に必ず測ってください。「置き場所に困って押し入れ行き」は、上位機あるあるの筆頭です。
FLX4とFLX10、差額約10万円の中身
具体的な機種で見てみましょう。Pioneer DDJ-FLX4は¥49,500、DDJ-FLX10は¥150,000。差額は約10万円です。
| 項目 | DDJ-FLX4 | DDJ-FLX10 |
|---|---|---|
| 価格 | ¥49,500 | ¥150,000 |
| ch数 | 2ch | 4ch |
| ジョグ画面 | なし | あり(液晶内蔵) |
| STEMS | 非対応 | 対応(ボーカル・ドラム等の分離) |
| 対応ソフト | rekordbox・Serato DJ Lite・djay | rekordbox・Serato DJ Pro・djay Pro |
| サイズ・重量 | 幅48cm・2.1kg | 幅72cm・6.7kg |
表を見れば分かる通り、差額10万円の中身は「4ch代」ではありません。ジョグ内液晶、STEMS、Serato DJ Pro対応、フルサイズ筐体——プロ志向の装備一式がまとめて付いてくる価格です。つまりFLX10は「4chが欲しい人の機材」というより「現場仕様を家に持ち込みたい人の機材」。この2台の詳しい比較はDDJ-REV5とFLX10の比較やDDJ-FLX10レビューでも掘り下げています。
逆にFLX4は、入門の定番と呼ばれるだけあって基礎練習に必要なものが全部入りです。スマホ接続にも対応していて、PCなしでも始められます。詳細はDDJ-FLX4レビューへ。他の候補と並べて見たい人は機材一覧で比較できます。
「いつか使うかも」で買ってはいけない理由
上位機を勧めない理由は、精神論ではなく実利の話です。
- 上達速度は変わらない:練習の中身は2曲のミックス。FLX4でもFLX10でも、最初の1年でやることはほぼ同じです
- 差額10万円の使い道が他にある:ヘッドホン、スピーカー、曲の購入費。ヘッドホンの選び方で書いた通り、モニター環境への投資のほうが上達に直結します
- 続くかどうかはまだ分からない:趣味の継続率は誰にも読めません。撤退時の損失は¥49,500と¥150,000で3倍違います
- 必要になったら買い替えればいい:2ch機で基礎を固めた頃には、自分に4chが要るかどうか自分で判断できます。人気機種は中古でも売りやすい
「いつか使うかも」の「いつか」が来る人は、その時には具体的な用途を言えるようになっています。用途を言えないうちは2ch。これが答えです。予算別の組み方は予算5万円で始めるDJも参考に。迷ったら機材診断で自分のスタイルから逆算してみてください。
よくある質問
Q. DJ初心者に4chコントローラーは必要ですか?
A. 不要です。DJの基本は2曲を混ぜる作業で、ビートマッチングもEQも選曲も2chで全部練習できます。3デッキ以上を同時に扱うのは応用技で、必要になる頃には自分で判断できるようになっています。
Q. 2chを買って後悔しませんか?
A. 後悔する人は少数派です。多くのDJは現場でも実質2デッキ運用ですし、2ch機で身につけたスキルは上位機にそのまま引き継がれます。買い替えるとしても、2ch機は中古市場で売りやすい価格帯です。
Q. DDJ-FLX4とDDJ-FLX10の違いは4chだけですか?
A. 違います。FLX10はジョグ内の液晶画面、STEMS対応、Serato DJ Pro対応、フルサイズの筐体など、プロ仕様の装備がまとめて付いてきます。差額約10万円は「4ch代」ではなく「プロ装備一式代」と考えるのが正確です。
まとめ
- chは同時に混ぜられる音源の数。DJの基本形は常に「2曲」なので、大多数は2chで足りる
- 4chが活きるのは「4デッキミックス」「サンプラー常駐」「外部入力」の3場面。どれも2chの基礎が完成した人の応用技
- FLX4(¥49,500)とFLX10(¥150,000)の差額は4ch代ではなく、ジョグ画面・STEMS・Pro対応を含むプロ装備一式代
- 「いつか使うかも」は買う理由にならない。用途を具体的に言えるようになってから上位機に行けば遅くない
- 差額の10万円はヘッドホン・スピーカー・曲代に回すほうが上達に効く